LOGINShare
第14話 恋の結末、そして始まり
Last Updated:
2025-09-24 20:19:14
Latest chapter
探偵ホッパーは、未来を変える 第26話 地下のラボラトリー
千絵美は、砂の中に落ちていた黒い金属片を握りしめた。それは、この異世界には存在しない、現代の爆弾の破片だった。「やはり、黒幕は私たちの世界から来た科学者よ。彼は、この世界の闇の錬金術と、現代の化学兵器を融合させている」千絵美は、ユージンに顔を向けた。「ユージン。彼の目的は、この世界の支配や復讐なんかじゃない。世界そのものを、自分の思い通りに作り変えることよ」ユージンは静かに頷いた。彼の予知が捉えられなかったのは、黒幕の計画が、過去の予知に基づいたものではなく、完全なる創造に基づいたものだったからだ。二人は、千絵美が発見した不自然な砂の隆起を掘り進めた。すると、古代の石造りの扉が現れた。ユージンは、その扉に魔法の光を当てた。「この扉には、非常に複雑な闇の魔法が施されている。私の光の魔法では、解除に時間がかかりすぎる」ユージンの言葉に、千絵美は扉の構造を探偵の目で調べた。「ユージン。この扉は、魔法の鍵だけでなく、物理的なセキュリティも兼ね備えているわ。この石の配列は、現代のダイヤル錠と同じ原理よ」千絵美は、扉の石の配列と、周囲の魔力の流れから、正確な解除コードを推理した。「左に三度、右に一度、そして…左に二度」千絵美が告げた通りにユージンが魔力を操作すると、重々しい音を立てて扉が開いた。地下の研究施設は、想像を絶する光景だった。広大な空間には、フラスコや蒸留器、奇妙な薬液が満たされた容器が所狭しと並んでいる。そして、その中央には、この世界には存在しないはずの、現代的なコンピュータのような装置が設置されていた。「ここは……まるで、科学と魔法の実験場だわ」千絵美は、驚きを隠せなかった。ユージンは、警戒しながら室内を進む。彼の魔力探知は、無数の毒ガスと魔法薬の痕跡を捉えていた。「千絵美、危険だ。空気中に、目に見えない毒が混ざっている」その時、研究室の奥から、低い笑い声が聞こえてきた。「ようこそ。探偵ホッパーと、光の魔法使い」声の主が姿を現した。彼は、全身を黒いローブで覆っているが、その指先には、シホが証言した通りの化学薬品による焼け焦げた痕が残っていた。「私の名前は、アキト。そして、私が、この世界を完璧なものにする、真の創造主だ」アキトはそう告げると、中央の巨大な装置のスイッチを押した。「君たちが、私の最高の化学反応を目撃する
探偵ホッパーは、未来を変える 第25話 砂塵の向こう側
ユージンと千絵美は、灼熱の砂漠の国へと足を踏み入れた。あたり一面に広がるのは、焼けつくような砂と、歪んだ蜃気楼だけだった。魔法の力が弱まるこの場所では、ユージンの魔力隠蔽魔法も長くは持たない。「本当に暑いわね」千絵美は、顔を覆う布の上から汗を拭った。「ああ。私の魔力が光を遮る程度にしか使えなくてな」ユージンは、警戒心を強めていた。砂漠の国の人々は、旅人を歓迎しない。特に、魔力を持つ者には厳しい。二人が目指すのは、「闇の錬金術師」の秘密結社があると言われる、都市から離れた砂漠の廃墟だ。道中、千絵美はユージンに尋ねた。「ユージンは、その錬金術師の目的について、何か予知したことはある？」ユージンは首を横に振った。「その者の存在が、私の予知を覆い隠している。まるで、未来そのものを書き換えるほどの強力な存在だ」「未来を書き換える……。やっぱり彼は、私たちと同じ、異邦人よ」千絵美は確信していた。現代の化学知識と、この世界の魔法を融合させること。それは、未来という名の予知に縛られず、自由な発想を持つ者だけが成せる業だ。「彼が作り出した毒ガスや兵器は、きっと、私たちを元の世界に引き戻すことのできる扉にもなり得るわ」千絵美の言葉に、ユージンの表情が曇った。「千絵美……」「大丈夫。あなたと離れるつもりはないわ。でも、彼の目的を知るには、その技術を理解する必要がある」数日後、二人はようやく目的の廃墟に辿り着いた。廃墟の中は、不気味な静けさに包まれていた。ユージンが周囲の魔力を探知する魔法を微かに使うと、地面の奥深くから、かすかな魔力の流れが感じられた。「地下だ。この下に、彼の研究施設がある」ユージンがそう囁くと、千絵美は探偵としての本領を発揮した。彼女は、地面に残された、かすかな薬品の匂いと、不自然な砂の隆起を見逃さなかった。「この先を掘れば、秘密の入口があるはずよ。そして……」千絵美は、砂の中に落ちていた、黒く変色した小さな金属片を見つけた。それを手に取ると、ユージンの顔色がさらに変わった。「その金属は……」「ええ。現代の、爆発物の一部よ」真の黒幕は、毒物だけでなく、より破壊的な兵器の開発も進めていた。二人の目の前には、錬金術師の恐るべき研究と、彼が企む世界の未来を懸けた計画の入り口が開かれようとしていた。
探偵ホッパーは、未来を変える 第24話 砂漠の錬金術師
神殿の地下室でシホを保護した後、千絵美とユージンはすぐさまアリアを後にした。ユージンはシホに、師匠のいる場所へと転移できる魔法を施し、彼女を安全な場所へ送った。ユージンの研究室に戻った二人の間には、新たな緊張感が走っていた。「黒幕は、ただ予知に囚われた悲劇の人物ではない。世界を意図的に混乱させようとしている悪意だ」ユージンは、彼の師匠や騎士、そしてシホとは違う、純粋な悪意を持つ存在に、強い警戒心を示した。千絵美は、シホの証言、特に「化学薬品による火傷の痕」という情報に、探偵としての全神経を集中させていた。「黒幕は、現代の化学知識と、この世界の闇の魔法を組み合わせている。それは、砂漠の国にあるという『闇の錬金術師』の秘密結社としか考えられないわ」ユージンは、古文書から砂漠の国の地図を取り出した。その国は、この大陸の最南端に位置し、毒物や薬物の研究が盛んなことで知られていたが、その実態は謎に包まれていた。「砂漠の国は、魔法の効力が弱まる特殊な土地だ。大規模な転移魔法は使えない。そして、光の魔法使いである私にとっては、極めて不利な場所だ」ユージンは、困難な状況を淡々と分析した。「つまり、次の舞台は、魔法よりも科学と論理が重要になる場所、ということね」千絵美は、そう言って微笑んだ。ユージンにとって不利な状況は、彼女の探偵ホッパーとしての能力を最大限に活かせる場所だということだ。二人は、砂漠の国への潜入作戦を練り始めた。「私は、化学兵器の知識と、彼の持つであろう錬金術の知識を照らし合わせる。あなたの武器は、闇に潜む毒を見つけ出すことよ」「ああ。私は、私の魔力を光ではなく、探知のために使う。彼の隠された拠点と、その闇の魔法の痕跡を探る」ユージンは、千絵美の作戦を聞き、静かに頷いた。彼の表情には、以前のような冷たさはない。そこにあるのは、千絵美への信頼と、愛する者を守るという強い決意だけだった。旅の準備が整った夜。ユージンは、千絵美に小さなペンダントを手渡した。それは、彼の魔力をわずかに封じ込めたもので、彼の居場所を千絵美に伝えるためのものだった。「…ホッパー。砂漠では、私の魔法は頼りにならない。君自身の力を信じるんだ」「あなたもね、ユージン。一人で無理はしないで。あなたは、この世界の未来であり、私の未来なんだから」千絵美は、彼の不安を打ち
探偵ホッパーは、未来を変える 第23話 毒の知識を持つ者
シホは、ユージンの魔法と千絵美の言葉によって、絶望的な予知の呪縛から解放された。彼女は、かつて自分が予知に囚われていた時のことを、涙ながらに語り始めた。「私を召喚した人物は、私の故郷、現代日本の科学技術に精通していました。彼は、私に化学の知識を与え、『未来を救うためには、この知識が必要だ』と囁いたんです」シホの証言は、ユージンと千絵美に衝撃を与えた。黒幕は、ユージンの師匠のように古の予知能力を持つ者ではなく、千絵美たちと同じ現代の知識を持つ異邦人である可能性が、極めて高まった。「その人物は、顔を見せなかった？」ユージンが尋ねると、シホは首を横に振った。「常にフードを深く被り、声も変えていました。でも、一度だけ……」シホは、何かを思い出すように、目を閉じた。「彼の指先に、奇妙な火傷の痕のようなものが見えました。それは、古傷のような、魔法によるものではない、化学薬品で焼けたような痕でした」その証言は、千絵美の探偵としての直感を強く刺激した。「化学薬品による火傷の痕…！ユージン、思い出して。騎士を召喚した人物の正体を探っていた時、何か手がかりはなかった？」ユージンは、騎士の記憶を探る魔法を試みたが、やはり黒幕の顔までは見えなかった。しかし、シホの証言を聞き、ユージンの脳裏に一つの映像が蘇った。「…シホを召喚した場所は、このアリア国境ではない。遥か南方の、砂漠の国だ。そして、その国には、『闇の錬金術師』と呼ばれる、古くから魔法薬や毒物を研究する秘密結社がある」ユージンは、その結社が持つ知識と、現代の化学知識が結びついたとしたら、この「石化毒」のような恐ろしい兵器を生み出すことができると考えた。「黒幕は、現代の科学知識と異世界の闇の魔法を融合させた、真の錬金術師よ」千絵美の推理は、真の黒幕が、単なる予言者ではなく、世界を裏から操る技術者であることを示唆していた。シホの心を救ったことで、二人は真の敵の正体に、一歩近づいた。しかし、黒幕の目的は、この国を救うことでも、復讐することでもない。それは、世界そのものを支配することかもしれない。ユージンは、千絵美の手を強く握った。「ホッパー。君の知識と、私の魔法が、この世界の真の闇を暴く」二人の前には、予知すら及ばない、未知の脅威が立ちはだかっていた。
探偵ホッパーは、未来を変える 第22話 魔女の涙
千絵美とユージンは、神殿の地下深くへと続く階段を静かに降りていった。空気は冷たく湿り、魔力の歪んだ流れが全身を包み込む。地下室は、円形の広間になっていた。中央には巨大な魔法陣が描かれ、その奥に、黒いローブを纏った一人の女性が立っていた。彼女の周りには、幻覚を引き起こす薬草が散乱している。「…来たのね。私を止める者たち」女性が振り返った。その顔は、極度の疲労でやつれていたが、瞳の奥には、千絵美と同じ現代の光があった。「あなたは…私たちと同じ、異世界から来たのね」千絵美が問いかけると、女性は悲しげに微笑んだ。「私の名前は、シホ。あなたたちと同じく、予知能力を持つ者によってこの世界に呼ばれた…ただの女子大生よ」シホは、自分もまた「未来の絶望」から人々を救うために召喚されたこと、そして、その絶望的な未来が、ユージンたちが過去に見たものと酷似していることを語った。「あなたも、ユージンと同じように、悲劇的な予知に囚われたのね」千絵美は、シホの孤独に共感した。彼女は、師匠や騎士と同じ、未来に絶望した悲劇の予言者だった。「石化は…人々を苦しみから救う、唯一の手段だった」シホは、震える声で告白した。彼女の予知は、この国全体が、数週間後に異形の怪物の大群によって滅ぼされるという、あまりにも恐ろしいものだった。「誰もが血を流し、苦しみながら死ぬ。それなら、痛みを感じる前に、永遠の眠りにつかせる方が、彼らにとっての優しさだと思ったのよ！」シホの瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちた。彼女は、自分の行動が間違っていると知りながら、予知した未来の恐怖に耐えきれず、毒ガスを使ったのだ。「違うわ！その予知は、もう現実にはならない！」千絵美は強く訴えた。「あなたの予知した『災厄』は、ユージンが過去に見たものと繋がっている。そして、私たちは、その災厄を引き起こす原因を、すでに断ち切ったわ！」千絵美は、ユージンが師匠と和解し、騎士の復讐を止めたことを語った。彼女の言葉は、シホの心に、希望の光を灯し始めた。「私は、あなたたちの予知とは違う。私の武器は、人の心を読む力よ。未来を変える方法は、人を傷つけることじゃない。希望を見つけることなの！」ユージンは、千絵美の隣に立ち、シホに魔法の光を向けた。それは、彼女の予知を打ち消す光ではない。千絵美と共に創り上げた、もう一つの希望に満
探偵ホッパーは、未来を変える 第21話 幻の予言者
千絵美とユージンは、アリアの街の中心にある神殿へと向かった。遠くからでも、その巨大な石造りの建物は、街全体を支配しているかのような威圧感を放っていた。神殿の周囲は、他の地域よりもさらに人々が少なく、重苦しい静寂に包まれていた。ユージンは、魔力を完全に封じ込めるため、ローブのフードを深く被り、千絵美の護衛の侍女として、目立たないように振る舞った。千絵美は、探偵としての観察力を研ぎ澄ませる。神殿に近づくにつれ、彼女の直感は、この場所が単なる信仰の中心地ではないことを告げていた。「ユージン。この空気、何かおかしいわ」千絵美は小声で囁いた。「ああ。高濃度の魔力が充満している。この神殿の地下には、何か巨大な魔力の源がある」ユージンは、その魔力の流れが、彼の知るいかなる魔法とも異なる、歪んだものであることに気づいていた。二人は、神殿の裏手にある、小さな薬草園に気づいた。そこは、街の他の場所よりも厳重に警備されている。千絵美は、警備の騎士たちの行動パターンを分析し始めた。「騎士たちの目線が、常に薬草園の奥の一点に集中している。奥に、何か特別なものがあるはずよ」ユージンが魔法でその奥を透視すると、そこには、地下へと続く隠された階段があった。「地下だ。魔女は、その地下で、幻覚を引き起こす薬草を使い、予知を行っているのだろう」千絵美は、ユージンの言葉を聞き、魔女の心理を深く読み解く。「彼女は、恐れているのよ。自分の予知が、師匠や騎士と同じように悲劇を招くことを。だから、薬草を使って無理やり予知を見ようとしている。それは、未来への希望ではなく、未来の絶望を探す行為だわ」魔女は、人々を石化させた行動からもわかるように、人々を救いたいという優しさを持っている。しかし、その優しさが、予知という名の呪いによって、歪んでしまっていた。「彼女は、神託の国の予言者として、この国を救う使命を負っている。その使命感と、予知能力が、彼女を追い詰めているのよ」ユージンは、千絵美の推理に深く頷いた。彼の師匠も、騎士も、そしてこの魔女も、皆、未来を予知する能力に囚われ、絶望した悲劇の人物だ。彼らが未来を変えようとした方法は、孤独と過ちに満ちていた。「千絵美。君と私だけが、この悲劇の連鎖を断ち切ることができる」ユージンは、千絵美の手を強く握った。二人は、警備の隙を突き、薬草園の
You may also like
離婚しましょう、はじめましょう
美希みなみ30.7K views離婚後、元夫の溺愛が止まらない
スイカのキノコ120.8K views契約終了、霜村様に手放して欲しい
心温まるお言葉443.0K views捨てられ妻となったので『偽装結婚』始めましたが、なぜか契約夫に溺愛されています！
さぶれ-SABURE-25.6K views私は君を守る村の狂人
桜庭結愛446 views恋に恋するって、こういうことですか？
心優(mihiro)1.6K views離婚したら元旦那がストーカー化しました
知念夕顔38.8K views夫の前から静かに消え去ります～どうぞあなたは愛人とお幸せに～
小嵩 名雪4.8K views
